日本は疲労大国!?疲れを引き起こす「疲労因子FF」

2024年08月10日

こんにちは!寺尾いのラボ整体院の渡邉です!

「ストレス社会」と呼ばれる現代において、老若男女を問わずすべての人が疲労と無関係ではないと言えます。疲労による身体の不調を訴え接骨院に来院する患者さまも少なくありません。今回は、この「疲労」を取り上げてみたいと思います。 目次 疲労に関する意識調査 「疲労」の定義 疲労には種類がある 「疲労」と「疲労感」の違い 身体の疲れでも脳疲労は起こる 疲労因子FFとは 疲労因子を誘発する活性酸素 患者が自身の身体の状態を把握するできるように 身体の酸化を防ぐ「抗酸化力」を高めるには 疲労に関する意識調査 2017年から行われている全国の20~70代の男女10万人を対象とした健康調査から、「日本の疲労状況」を分析(一般社団法人日本リカバリー協会調べ)したところ、2021年では「疲れている人(慢性的に疲れている人を含む)」が80.7%という結果となりました。 男女別では割合に大きな差は見られませんでしたが、男女年代別で見ると20・30代女性は「元気な人」の割合が約1割に止まり、「慢性的に疲れている人」は5割を超える結果となっています。 全国10万人調査から「日本の疲労状況」を発表世代別で最も「慢性的に疲れている」のは20代・30代とくに女性は5割以上と深刻に(一般社団法人日本リカバリー協会のプレスリリース) 「疲労」の定義 疲労は多くの動物が備え持つ防御シグナルであり、疼痛、発熱と並び生体への三大アラームと言われています。しかし、その科学的根拠は長らく説明できないままでした。そんな中、1991年に発足した厚生労働省(旧厚生省)の「慢性疲労症候群研究班」によって、疲労の化学的根拠が明るみになりました。さらに1999年に始まった文部科学省(旧科学技術庁)の「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究」では、慢性疲労の病院・病態の解明、疲労が起きるメカニズムも解明されました。 2010(平成22)年には、日本疲労学会で「疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」と定義されました。 疲労には種類がある 疲労は「精神的疲労」「身体的疲労」「脳疲労」の3つに分類されます。 また、疲労の継続時間による分類として「急性疲労」「亜急性疲労」「慢性疲労」の3種類が存在します。通常の疲労であれば、休養をとる等の方法で解消されるものですが、継続時間の長い慢性疲労の場合は疲労が蓄積された状態であり、容易に解消されません。その症状には主に、強い疲労感、筋肉痛、頭痛、咽頭痛、睡眠障害、精神障害、脳機能障害があるとされています。 「疲労」と「疲労感」の違い 注意しておきたいのが「疲労」と「疲労感」です。この2つの単語は同義語として使われがちですが、実は疲労と疲労感とはまったく異なるものなのです。「疲労」が肉体的に受けるものであるのに対し、「疲労感」は意欲や達成感に大きく影響されることがわかっています。 疲労は「疲労」と「疲労感」とに区別して用いられることがあり、「疲労」は心身への過負荷により生じた活動能力の低下を言い、「疲労感」は疲労が存在することを自覚する感覚で、多くの場合不快感と活動意欲の低下が認められる。様々な疾病の際にみられる全身倦怠感、だるさ、脱力感は「疲労感」とほぼ同義に用いられている。(日本疲労学会:平成 22 年発表) 例えば、同じ道のりを“観光として風景を楽しみながら歩く場合”と“仕事場に向かって歩く場合”、距離が同じであるにもかかわらず、疲労感がまったく異なるのではないでしょうか。 また、つまらない単純作業はすぐに飽きて疲れてしまいますが、やりがいのある仕事や楽しい作業(例えば趣味のテレビゲームなど)は疲労感が少なく感じられます。 これは、前頭葉が発達した人間だからこそ受ける影響です。実は身体は疲労しているにも関わらず、ドーパミンやβ-エンドルフィンといった興奮物質が生み出す達成感によって、疲労感を抑えているのです。つまり、疲労には脳が大きく関与しているということになります。 身体の疲れでも脳疲労は起こる 実は、筋肉が疲れたと感じる時にも、実は脳疲労が起きているということが近年わかってきました。特に、自律神経の中枢と言われる視床下部が疲労していたのです。 余談ではありますが、これまで筋肉痛は“筋肉に乳酸が溜まることが原因”と言われてきました。この説は科学的根拠がないことが明らかとなっています。 ではなぜ、身体を使う時に脳疲労が起きるのでしょうか。運動をしている時のことを想像してみてください。運動を始めると、自律神経の働きにより数秒後には心拍数が上がり、呼吸が早くなり、やがて汗をかきます。 こうした症状はごく自然なのですが、すべて脳の中にある中枢(視床下部や前帯状回)がコントロールをしているのです。よって、身体を使う時であっても、視床下部は常に疲れやすくなると言えます。 こうした疲労によって発される疲労感という信号が、ドーパミンなどにより覆い隠されてしまうと、疲労が蓄積され、慢性的疲労に陥ってしまいます。もしも、覆い隠されている疲労を数値として知ることができればどうでしょうか。 疲労因子FFとは 2008年、東京慈恵医科大学ウイルス学講座の近藤一博教授の報告によると、徹夜で激しい運動をさせたマウスの臓器を調べたところ、あるタンパク質が通常の3~5倍、肝臓や心臓にいたっては10倍もの量が検出されました。このタンパク質こそが疲労因子FF(ファティーグ・ファクター)」でした。 疲労因子FFを元気なマウスに投与したところ、くるくると車輪を回していたマウスが、徐々に運動をしなくなり、疲れて動けなくなったということです。 この実験から示唆されたのは、疲労因子FFは疲れを引き起こす直接の原因であること、すなわち、疲れている状態だと身体に疲労因子FFがたくさん増えるというものでした。 疲労因子を誘発する活性酸素 最近の研究結果から、疲労の原因として「活性酸素」が注目されています。人間が活動すると、筋肉であっても脳であっても、酸素を用いてアデノシン三リン酸を作り出します。この結果として大量に産生されるのが、活性酸素です。 活性酸素は強力な酸化作用を持っているため、過度に発生すると生体防御の枠を超えて自身の細胞を酸化する恐れがあります。細胞が酸化することで機能不全に陥り、活動能力の衰退、疲労へとつながるのです。こうした活性酸素による細胞の酸化は、老廃物を産生しますが、その一種から誘発される物質が疲労因子FFです。 患者が自身の身体の状態を把握するできるように この疲労因子FFの発見は非常に画期的なものでした。なぜなら、これまで曖昧な点が多かった疲労そのものを可視化し測定できるようになったからです。こうした客観的データを接骨院でも取り扱うことができれば、患者さまがご自身の身体の状態を可視化して把握しやすくなるのではないでしょうか。 柔道整復術という古来から続く技が、こうした研究を受け、より有効的なものへと発展していくことを願います。

執筆者:柔道整復師
いのラボ接骨院グループ 代表
猪股真澄(治療家歴18年)

いのラボ接骨院グループ 代表 猪股真澄

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